溶ける
- 青央つかさ
- 2020年7月24日
- 読了時間: 1分
「はい、あーんして」
唐突に差し出されたお菓子に、俺は少し戸惑う。
「何?」
俺の問いに、彼女はクスクスと可愛らしい笑みを浮かべる。
「チョコレート、好きでしょ」
そう言って、彼女はチョコレート菓子の半分を口に咥え、もう半分を食べろと俺に近付く。
なんだ、単に甘えたいのか。そう理解して彼女の桃色の唇に触れるように、チョコを半分咥えた。そのまま半分齧ろうとした瞬間、彼女がニヤリと笑い、俺の唇に噛み付いた。
「――っ」
がり、と音が聞こえた気がした。
驚く俺を尻目に、彼女は笑顔のまま、膝の上に頭を乗せ横になった。
「ねぇ、面白かった?」
「……」
「明日も雨かな?」
「……」
「甘いの、好き」
「……」
「ねぇ、愛してる」
口の中で、チョコと血の味が混ざった。
END
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