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溶ける

「はい、あーんして」

 唐突に差し出されたお菓子に、俺は少し戸惑う。

「何?」

 俺の問いに、彼女はクスクスと可愛らしい笑みを浮かべる。

「チョコレート、好きでしょ」

 そう言って、彼女はチョコレート菓子の半分を口に咥え、もう半分を食べろと俺に近付く。

 なんだ、単に甘えたいのか。そう理解して彼女の桃色の唇に触れるように、チョコを半分咥えた。そのまま半分齧ろうとした瞬間、彼女がニヤリと笑い、俺の唇に噛み付いた。

「――っ」

 がり、と音が聞こえた気がした。

 驚く俺を尻目に、彼女は笑顔のまま、膝の上に頭を乗せ横になった。

「ねぇ、面白かった?」

「……」

「明日も雨かな?」

「……」

「甘いの、好き」

「……」

「ねぇ、愛してる」

 口の中で、チョコと血の味が混ざった。




END

 
 
 

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