焦がれ
- 青央つかさ
- 2020年8月3日
- 読了時間: 2分
大好き、大好き、大好き。
でも、この想いは伝わらない。
私は貴方を追いかけている、ずっとずっと前から追いかけている。告白なんてしないし、友達でいてくれるならそれで満足。だって、そうでもしないと貴方は困ってしまうでしょう? 私がもし想いを伝えたら、戸惑ってしまうでしょう?
だから何もしない、いつも通りに連絡を取り合って、たまに通話して、ちょっと趣味について語ってみたり、相談してみたり、それだけでいいの。そうすれば、貴方はいつまでも私と一緒にいてくれるし、仲良くしてくれる。なんて事ない、日常を送れる。
でも、時々胸が苦しくなるの、何故だろう? 今の関係に満足しているはずなのに、どうしてこんなに恋焦がれてしまうのか分からないの。
「今日も遅くまで、付き合ってくれてありがとう」
「本当だよ」
「その言い方は何、ちょっとくらい優しい言葉をかけてよ」
「仕方ないなぁ、楽しかったよ」
携帯越しに貴方の声が聞こえる、こうしたやり取りだって幸せに感じる。嘘でも社交辞令でもこうやって「楽しい」という言葉が聞けるならそれは素敵な事。
あぁ、でも声に出しそうになるの、私の頭の中にある「好き」を伝えたくなってしまうの。
言わないよ、言えないよ、私たちは友達、仲のいい普通の友達。それが一番いいって分かってるの。
「また連絡するね」
「んー、分かった」
素っ気ない返事の中に、貴方の優しさは見える。なんだかんだ言って、私の我儘に付き合ってくれるものね。私から連絡を取らない限り、アクションが何もないのだけは寂しいけれど、それでも私の言葉に貴方は返事をくれる。とても嬉しいのよ。
ポン、と音を立てて切れる通話。耳に残る声を頼りに私はベッドへ横になり目をつむる。
好きよ、好き、大好き。これは嘘なんかじゃないの、本当に心から愛しているの。友達でいいから、傍にいて欲しいという考えと、もういっそ楽になってしまおうかという考えが頭の中をぐるぐる回っている。
伝わらない想い、伝えられない想い、私の暗い部分が、今、揺れている。
END
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