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くろねことふしぎなくに

  よる11じ、ユウくんは ねむれません。

 きょうは いっぱいあそんだし、おひるねも してないから、ねむれるはずなのに。

 そうおもいながら むく、とおきあがり、ホットミルクをのもうと へやをでました。


 へやをでると、「にゃあ」とこえがします。

 あしもとをみると、どこから はいってきたのか、くろねこが 1ぴき、こちらを みあげて すわっています。


「どこからきたの?」

 ユウくんがきくと、くろねこは うしろのかべを みあげました。


 そこには、おかあさんが かってきた、さかなのかたちをした とけいが かかっています。

 だけど、そのとけいに ぶらさがっている、ねこのふりこが ありません。

「そうか、おまえは とけいから でてきたんだね」

 そうだよ、というように くろねこは「にゃあ」となきます。


 くろねこは、ユウくんの へやのまえで「にゃあお」となきました。

 どうやら へやに はいりたいようです。

 ユウくんが へやのとびらをあけると……


 なんと、じぶんのへやが もりになっているのです。

 おどいたユウくんが くろねこをみると、くろねこは どこかたのしそうに「にゃん」とないて、さきを あるいていきました。

 ふしぎに おもいながらも、くろねこの あとを ついていきます。


 よくよくみると、きの いっぽん いっぽんには、さかなが みのっていました。

 ユウくんが てをのばして、さかなを とってたべてみると、それは クッキーで できています。

「わぁ、おいしい」


 おみせで うっている クッキーより、ずっとずっと おいしくて、ユウくんは みのったクッキーを いっぱいたべます。

 チョコ、バナナ、にんじんや トマトまで、あじも たくさんあって、どのクッキーを たべようか まようくらいでした。


 ふたたび もりを あるいていると、パッと しかいが ひらけ、ひろいのはらに でました。

 のはらには ところどころに ねこじゃらしが はえていて、けいとだまが いくつもころがっています。

 くろねこは まっさきに けいとだまにとびつき、あそびはじめました。


 ユウくんは、ちかくの けいとだまを そっと ころがしてみました。

 すると、こんどは そのけいとだまに、くろねこが はんのうして じゃれてきます。


「こっちだよ」

 ユウくんが べつな けいとだまを ころがします。

 くろねこが とびついてきます。

「こっちにもあるよ」

 またまた べつな けいとだまを ころがすと、くろねこが じゃれてきます。

 そうやって、ユウくんは くろねこと あそびました。


 めいっぱい あそんだあと、くろねこは つぎはこっちだ、と あるきだしました。

 ついていった さきには、ひとつの はしがかかっていて、はしのしたには しろいかわが ながれています。


 くろねこが かわのちかくまでいき、ぴちゃぴちゃ、と かわのみずを のみはじめました。

 ユウくんも かわべりまで いくと、しろいかわを てにすくって のみます。

「あ、これ、ミルクだ」


 あまくて やわらかい あじのするミルクは、なんだか こころが やすまるきがします。

 ユウくんは もうひとすくいして、ミルクをのみました。


 はしをわたって しばらくあるくと、ねこのベッドが みえました。

 ただ、ねこのベッド とはいっても、ユウくんが よこになれるくらい おおきいベッドです。


 くろねこが ベッドへ とびのり、ユウくんをみつめ「にゃあ」となきました。

「そういえば、ミルクを のんだから、ねむくなったかも」

 さそわれるままに、ユウくんは ベッドにあがり、すりよってきた くろねこをだいて、めをとじました。


 おきると、そこは ねこのベッドではなく、ユウくんの ベッドのうえでした。

 まわりを みわたしても、そこは ふしぎなくに ではなく、ユウくんのへや。

 くろねこもいません。


 へやをでて ろうかにある とけいをみると、ちゃんと くろねこのふりこが チクタクチクタク、じかんを きざんでいました。


 よるの できごとを ゆめのように かんじながらも、くちのなかにひろがる ミルクのあじを おもいだし、くろねこの ふりこに えがおをむけます。

「また、ねむれなくなったら、あそぼうね」




END

 
 
 

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