抱かれる時間
- 青央つかさ
- 2020年7月24日
- 読了時間: 2分
傍にいる事だけは、許してくれた。
けれど、駄目ね。私はそれでは満足出来ない。
貴方は座って、膝に乗せた私の頭を撫でてくれた。その手はとても優しくて、まるで夢の中にいる気分だった。
腰に腕を回し、ぎゅっと抱き締めると、貴方は笑って言うの。
「まったく、本当お前は甘えたがりなんだな」
それは決して、呆れた物言いではなく、私の言動を受け入れ、柔く包むような言葉。
知ってるの、貴方が誰よりも優しい事を。知ってるの、貴方が何よりも素敵な事を。
それから二人で横になり、私はやはり甘えるように、貴方に抱き付いて、首筋に顔を埋める。
貴方の香りが好きよ。私を、強く、強く惹き付ける香り……このまま抱き合っていたら、残り香くらいはくれるかしら。
背中を撫でる手が大きくて、温かくて、とても安心した。
このまま、一線を越えてしまいたい。私の中ではぐるぐると欲が巡っている。貴方とならばきっと、生臭い、地を這うような行為にならないと思うの。どろどろしていて、ベタベタと溶けそうな感覚も、襲ってこないと思うの。
でも、どうしても口には出せなくて、その気になってくれるかしら、と首筋を甘く噛む。しかし、貴方は「はいはい」と、子供をあやすように、頭を撫でてきただけ。
引き寄せてほしいのに、口付けてほしいのに、もっと奥まで触れてほしいのに……私では、もう駄目なのね。
「私、貴方の事、好きなの」
分かっていても、我慢が出来なくて、心の中で渦巻く感情の一部を吐露した。
「嘘つかないの」
結果は同じね。ねぇ、今の告白が、私でなければ、貴方はなんて答えたの?
悲しくて、けれど、頭を撫でてくれる手が心地良くて。
私はぎゅっと抱き締めながら目を閉じた。
END
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